
はじめに
睡眠時無呼吸症候群の定義
無呼吸の型
検査方法
臨床症状
原因疾患

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第1章 はじめに
- 睡眠障害にはさまざまなものがありますが,最近では睡眠中に
呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群がもっとも大きな注目を浴びています.
- 睡眠時無呼吸症は高血圧,不整脈,脳卒中,虚血性心疾患などの循環器
疾患,あるいは過労死,突然死などとの関連も指摘さてきてきわめて
重大な問題となってきています.
睡眠時無呼吸症候群は,乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に
みられます.特に中年以降の男性の2〜4%に本症候群がみられると
考えられています.
しかし,女性では0.5〜2%と少ないことは興味がある点です.
睡眠時無呼吸症候群は,二次的に様々な循環器疾患を引き起こす
原因の一部を占めるともみられています.
1994年のアジア睡眠会議のシンポジウムでの報告では,
我が国での睡眠時無呼吸症候群の患者数は約200万人と推定されています.
睡眠時無呼吸症候群は,一般の健常成人の中にも多数に潜在しており,
高血圧,不整脈,脳卒中,虚血性心疾患等の循環器疾患,あるいは過労死,
夜間突然死との関連も指摘されており,さらには,仕事や学業の
成績が上がらないで,真剣に働く意欲に欠け,性格の変化や
性的能力の低下,失職による経済的問題,日中の傾眠による交通事故など,
数々の社会的不適応の原因になっていることが多く,極めて
重大な社会問題にもなってきています.
米国での推計によれば,睡眠時無呼吸症候群の患者は,そうでない
人達と比べて,高血圧は2倍,心疾患は3倍,脳血管障害は4倍の
罹患率がみられています.
睡眠時無呼吸症候群に対する治療は,今後は非常に重要な
医療上の課題になると考えられます.欧米各国においては,
すでに睡眠センタが各地に設立され,基礎的,臨床的研究が開始されています.
第2章 睡眠時無呼吸症候群の定義
- 無呼吸(Apnea)
呼吸が10秒以上停止した状態を無呼吸と定義します.
- 無呼吸指数(Apnea Index)
1夜間の無呼吸の発生回数を総睡眠時間で割った指数です.
- 睡眠時無呼吸症(SAS)
無呼吸指数が5以上の場合,睡眠時無呼吸症と定義します.
睡眠中には正常人でも,無呼吸,低呼吸や呼吸周期の不整が
みられることが知られています.
そこで,10秒未満の呼吸停止は正常とされ,
乳幼児や正常成人でも入眠時には周期性呼吸(Periodic Breathing)
が出現することが指摘されています.
睡眠時無呼吸症の重症患者の場合,1夜間で300〜400回もの無呼吸を
起こす場合があります.その場合の無呼吸指数は30〜100にもなります.
第3章 無呼吸の型
- 中枢型(Central SAS)
呼吸運動中枢の活動停止,または興奮電動の障害により,呼吸筋が
運動停止する無呼吸の型のことをいいます.
- 閉塞型(Obstructive SAS)
胸郭と腹壁の呼吸運動は保たれるが,上気道の一部に閉塞が
起こるため,口や鼻からの換気が停止する無呼吸の型のことをいいます.
- 混合型(Mixed SAS)
無呼吸のはじめは中枢型で,その後,
閉塞型に移行するタイプの無呼吸のことをいいます.
中枢型の無呼吸は,器質性脳障害患者や循環器疾患の際に
みられることが多く,一般に脳幹の呼吸発振中枢の異常に
よるものと,科学制御系の異常によるものにわけて検討されています.
中枢性睡眠時無呼吸の特徴として,無呼吸は一夜を通してほぼ均等に
出現し,一般に無呼吸の出現率の高い症例では,NREM浅睡眠期によくみられ,
出現率の低い症例ではREM期に比較的多発するとの報告があります.
閉塞型睡眠時無呼吸の病因としては,覚醒時にすでに上気道の狭窄
を起こす扁桃肥大や舌根沈下などが伴うことにより,
上気道の閉塞が生じて無呼吸となると考えられています.
第4章 検査方法
- PSGによる検査
1夜間,またはそれ以上の期間,入院して行う精密な検査です.
検査項目としては鼻呼吸,腹部,胸部の呼吸運動,心電図,眼電図,脳波,
血中酸素飽和度などです.
- 簡易モニタによる検査
PSG検査の検査項目から眼球運動や脳波の測定などをのぞいた2〜5程度の
項目を簡易的に測定する装置により,入院することなく検査を行います.
PSG(Polysomnograph)により検査を行うには,患者は多くの電極を
セットされていて,しかも慣れない場所なのであまりよく眠れないことがほとんどです.
そこで多くの病院では入院2日目以降に本検査を行っています.
睡眠呼吸障害の患者に対して適切な治療を行うためには,その原因と
重傷度の的確な診断が重要です.しかし,その確定診断はPSGによって
なされています.しかしPSGは脳波,眼球運動,頤筋放電,鼻の呼吸気流,
胸腹壁運動など多くの項目の測定を必要とし,険者,披検者とも負担が大きく,
PSGを行える施設は国内では大学病院などに限られてしまいます.
また,これらの限られた施設だけでは,本邦においても近年増加しつつある
睡眠時呼吸障害を訴える患者数に対応しきれなくなってきています.
そのために,一般の施設でも行える睡眠呼吸障害のスクリーニングとしての
簡易検査の必要性が生じてきました.
第5章 臨床症状
睡眠中の臨床症状
- 無呼吸
- いびき
OSAS患者では必発の症状です.このいびきは無呼吸中には
起こらないが,換気再開時に強烈な音が生じます.その後数回の
いびきが連続して起こったあとに,再び無呼吸状態になります.
- 過眠と不眠
過眠は夜間の無呼吸に伴う睡眠不足に起因しています.このために,SAS
患者は入眠するまでの時間(入眠潜時)が非常に短い傾向があります.
- 異常行動
無呼吸解除後の呼吸再開時に手足を大きく動かす行動がみられることがあります.
- その他
夜尿,インポテンツ,多汗などがあります.
覚醒中の臨床症状
- 昼間傾眠
睡眠不足に起因する症状でありますが,大抵は自制範囲内の眠気です.
しかし,中には耐え難い強烈な眠気を訴える患者もあります.
居眠り運転のために2年間で5回もの追突事故を繰り返した患者の例もあります.
- 起床時の頭痛
- 起床時の口内乾燥,咽頭痛
- 精神症状
易疲労性,無頓着,活動性の低下,易怒性,記憶力低下,失見当識,
意識混沌などがあります.
合併症
- 高血圧
夜間の無呼吸が慢性化すると,持続した高血圧を呈するようになるが,
無呼吸の治療によってこの高血圧は速やかに軽快する.これは,降圧剤
によってもなかなか完治しない本態性高血圧との大きな違いです.
また,健康人では夜間睡眠中に約20%の血圧降下がみられるが,SAS患者
では逆に,睡眠時無呼吸に一致して血圧が上昇します.
- 心,脳血管疾患
SAS患者では,狭心症,心筋梗塞および脳梗塞が,SASのない患者よりも
高率に発症することが確認されています.これは,慢性的な
夜間無呼吸に対する結果として,赤血球が著しく増加(多血症)し,
血液の粘性が高まることが一つの要因であるとされています.
- その他
不整脈や呼吸不全など.
第6章 原因疾患
閉塞型睡眠時無呼吸の原因疾患
- 肥満
- 上気道形態異常
- 鼻,副鼻腔疾患
外鼻孔狭窄,鼻中隔弯曲症,鼻アレルギー,副鼻腔炎,鼻茸など
- 上咽頭疾患
後鼻孔閉鎖,アデノイド増殖症,上咽頭腫瘍など
- 中咽頭疾患
口狭形態異常(軟口蓋低位,過長口蓋垂,後口蓋弓が広い),口蓋扁桃肥大,中咽頭腫瘍など
- 下咽頭疾患
喉頭軟弱症,下咽頭腫瘍など
- 顎,口腔疾患
頭部,顔面奇形(クルーゾン病,アペルト症候群など),小顎症,巨大舌など
- 神経疾患
両側反回神経麻痺,Shy-Drager症候群など
- 炎症性疾患
粘液水腫,末端肥大症,咽頭蓋浮腫など
中枢型睡眠時無呼吸の原因疾患
- 脳障害
血管障害,腫脹,感染,変性など
Wallenberg症候群,Shy-Drager症候群など
- 心障害
心不全,房室ブロックなど
- 高所低酸素症
- 原発性肺胞低換気症候群
- 慢性閉塞性肺疾患
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