パオロ・バチガルピという人の近未来SF。邦題は「ねじまき少女」
著者はこんな名前だけどアメリカ人。
長編小説デビュー作らしいけど、素晴らしいです。度肝抜かれました。
石油が枯渇し、(おそらく)温暖化の影響で界面が上昇し、遺伝子操作の弊害の疫病との伝染病が蔓延していて、病気に耐性をもつ遺伝子組換え作物しか栽培できなくなっている近未来SF。舞台はタイ王国のバンコク。
世界経済はバイオ企業に支配され、エネルギー不足の為自転車やリキシャ、ゼンマイバイクが市民の足で石炭を使う車はほんの一部の金持ちのみ。
もうねぇ、この背景というか世界観からしてずば抜けて面白いのですよ。
ここに、遺伝子操作によって生み出された新人類、動きがギクシャクしているので「ねじまき」と呼ばれる生物がでてきたり、伝染病や海面上昇から国を守る環境庁、種子データバンクのデータを欲しがる外国人、新型ゼンマイの設計図を狙う元難民、レクター博士の様な遺伝子学者。。。
複雑に絡みあう彼ら登場人物と思惑、重々しくて生々しくて痛々しい描写。そして後半の展開と話の絡み具合と期待とそれを裏切る展開。そして読み終えた後のズシンと来る喪失感と爽快感。喪失感と爽快感が一緒に感じられるってあるんですね。
SFとは思えないリアリティに悪夢を見ているかのような感じが続く小説でした。
読み始めてちょっとブレードランナーに世界観が似てるかな?って思ったけど、読み進むとブレードランナーがしょぼく感じちゃう位。
もうほんとすごい小説です。ここ最近読んだ小説でダントツの一位。
ヒューゴ賞、ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル記念賞と主要なSFの賞を総なめしたのも納得。タイム誌の「今年の10冊」にも選ばれたそうです。
「パオロ・バチガルピ」
この名前は覚えておこう!!
★★★★★